『天上の虹』続編|持統天皇を歴史と漫画から勝手に考察してみた

レビュー・感想

先日、里中満智子さんの漫画『天上の虹』についてレビュー記事を書きました。

『天上の虹』は、持統天皇を主人公に、古代日本の激動の時代を描いた歴史漫画です。奈良県立万葉文化館でも、長年の研究を経て2015年に完結した全23巻の『天上の虹』と、歴史・考古学・文学資料を関連づけて紹介する展示が行われています。

今回、改めて持統天皇について調べてみました。

きっかけは、Wikipediaで持統天皇の生涯や功績をざっくり読み直したことでした。

すると、漫画を読んでいたときとは少し違った持統天皇の姿が見えてきたのです。

今回は、歴史の専門家ではない私が、『天上の虹』と簡単に調べた歴史上の持統天皇を比較して感じたことを、「勝手に考察」として書いてみたいと思います。

※この記事は歴史学的な研究記事ではなく、『天上の虹』を読んだ一読者としての個人的な感想・考察です。

『天上の虹』で強く感じた「女性としての持統天皇」

『天上の虹』を読んでいて私が強く感じたのは、持統天皇が「天皇」という立場だけで描かれているわけではないということです。

一人の女性として。

妻として。

母として。

そして、さまざまな人間関係の中で悩み、苦しみ、決断する一人の人間として描かれている。

ここが、この漫画の大きな魅力なのではないかと思いました。

もちろん歴史上の人物を題材にしている以上、実際に何が起こったのかという史実があります。

しかし、史料に残っているのは、すべての人間の感情ではありません。

「そのとき、本人は何を思ったのか」

「なぜその決断をしたのか」

「母親として子どもをどう思っていたのか」

こうした部分は、史料だけでは分からないことも多いでしょう。

だからこそ、漫画という表現だから描ける部分があるのだと思います。

歴史上の持統天皇を調べてみると印象が変わった

私が今回あらためて持統天皇について調べてみて驚いたのは、やはり政治面での存在感です。

持統天皇の在位は690年から697年。

その後は譲位して持統太上天皇となり、次の世代を支える立場になります。

そして持統天皇の時代には、藤原京の造営など、国家の仕組みを整えていく大きな動きがありました。

奈良県の資料でも、694年に持統天皇が藤原京へ遷都したことが紹介されています。

さらに、後の大宝律令へとつながる律令国家の整備も、天武・持統の時代から続く大きな流れの中にありました。

つまり、持統天皇という人物を「一人の女性天皇」というだけで見ると、その政治的な側面をかなり見落としてしまうのではないか。

私はそんなことを感じました。

「持統天皇って、ものすごく政治家だったのでは?」

ここからは、完全に私の勝手な考察です。

持統天皇について調べているうちに、

「この人、ものすごく政治家としての才能があったのでは?」

と思ってしまいました。

もちろん、現代の政治家と飛鳥時代の天皇をそのまま比較することはできません。

そもそも当時と現代では、国家の仕組みも社会制度も、女性の立場もまったく違います。

それでも現代人の感覚で無理やりイメージするなら、

「もし現代に生きていたら、首相のような立場で国の方向性を決めていた人物なのでは?」

と思ってしまうのです。

これはもちろん歴史学的な評価ではなく、私が持統天皇の事績を現代人としてイメージしたときの感想です。

藤原京という大きな都を造り、天皇を中心とした国家の仕組みを整えていく。

そして、自分の代だけではなく、その後の世代へと国家を引き継いでいく。

そう考えると、かなり長期的な視点を持っていた人物だったのではないか、と感じます。

漫画では「政治家」より「母親」の顔が印象に残った

ところが、『天上の虹』を読んだ私の印象は少し違いました。

もちろん政治的な場面もたくさん出てきます。

しかし、それ以上に心に残ったのが、

「母としての持統天皇」

でした。

これは、漫画だからこそ強く描かれた部分なのではないでしょうか。

歴史上の人物を、政治的な功績だけで描いてしまうと、どうしても人物が遠い存在になってしまいます。

「藤原京を造った」

「国家制度を整えた」

「皇位継承に関わった」

という出来事だけを並べても、その人がどんな人物だったのかは、なかなか想像できません。

そこで里中満智子さんは、持統天皇を「女性」として描いた。

私はそんなふうにも感じました。

フィクションがあるからこそ、歴史人物が身近になる

歴史漫画には、どうしても創作や人物の心情描写が入ります。

でも、それは必ずしも悪いことではないと思います。

むしろ、すべてを史実だけで描いてしまったら、漫画としてはかなり難しくなるのではないでしょうか。

たとえば、

「このとき持統天皇は何を考えていたのか?」

「夫である天武天皇をどう見ていたのか?」

「母として子どもの将来をどう考えていたのか?」

「政治的な決断をするとき、女性としてどんな葛藤があったのか?」

こうしたことは、史料だけでは完全には分かりません。

だからこそ作者が、史実を土台にして人物の感情を想像し、物語として描いていく。

それによって、私たち読者は1000年以上も昔の人物に感情移入できるのだと思います。

「歴史上の持統天皇」と「漫画の持統天皇」は違って見える

今回、簡単に歴史を調べてから『天上の虹』を振り返ってみると、私はこの二つの持統天皇を別々に見るようになりました。

歴史上の持統天皇を見ると、

「国家をどう作っていくのかを考えた人物」

という印象があります。

一方、『天上の虹』の持統天皇を見ると、

「その国家を作っていく過程で、悩み、愛し、苦しみ、母として生きた女性」

という印象が強く残ります。

どちらが本当の持統天皇なのか、という話ではないと思います。

歴史資料から見える持統天皇と、物語として描かれた持統天皇。

その両方を見ることで、人物像が立体的になるのではないでしょうか。

飛鳥時代の日本って、どんな国だったのだろう?

そして、ここまで調べてみて新たに気になったことがあります。

それが、

「そもそも飛鳥時代の日本って、どんな社会だったの?」

ということです。

現代の日本では、女性が政治家になったり、企業の経営者になったりすることも珍しくありません。

もちろん、現在でも男女の違いによる問題が完全になくなったわけではありません。

それでも、私たちは「女性が政治や社会の表舞台に立つ」ということを、少なくとも制度上は当たり前のものとして考えることができます。

ところが持統天皇が生きたのは、今から1300年以上も前です。

その時代に女性が天皇となり、国家の運営に関わっていた。

そう考えると、

「飛鳥時代って、私が思っていたよりずっと複雑で面白い時代だったのでは?」

と思えてきました。

歴史の教科書では、人物名や出来事を覚えることが中心になりがちです。

でも、その人物が生きていた社会そのものを想像してみると、歴史の見え方が変わります。

「持統天皇=女性天皇」だけではもったいない

持統天皇について調べる前の私は、「持統天皇=古代の女性天皇」というイメージがかなり強かったと思います。

ところが『天上の虹』を読んで、さらに歴史を調べてみると、それだけでは語れない人物だったのではないかと思うようになりました。

女性であり、母であり、皇后であり、そして天皇でもある。

さらに国家の仕組みが大きく変化していく時代に、その中心にいた人物でもあります。

奈良県立万葉文化館でも、持統天皇について「冷静沈着で理知的かつ合理的」というイメージが語られる一方、里中満智子さんは和歌などから、一途な思いを持った魅力的な女性として捉えています。

この両方のイメージがあるからこそ、『天上の虹』という作品が面白いのかもしれません。

『天上の虹』を読んだから歴史を調べてみたくなった

今回のことで、私は歴史漫画の面白さを改めて感じました。

歴史を勉強してから漫画を読むのではなく、

漫画を読んだから歴史を調べたくなった。

これでもいいのではないでしょうか。

最初は「漫画として面白い」と思って読んでいた作品でも、あとから実際の歴史を調べてみる。

すると、

「ここは史実なんだ」

「この人物は実際に存在したんだ」

「この出来事が、その後の日本につながっていくんだ」

と、新しい発見があります。

そして、そこからさらに自分なりの疑問が生まれてくる。

今回の私の場合、それが、

「持統天皇って、実はものすごく政治的な能力を持った人物だったのでは?」

という疑問でした。

まとめ|漫画と歴史を比べると、持統天皇がもっと面白くなった

『天上の虹』を読んだとき、私は持統天皇を「一人の女性」として強く感じました。

そして今回、歴史上の持統天皇について改めて調べてみると、今度は「国家を動かした人物」という側面が強く見えてきました。

女性として。

母として。

妻として。

そして政治を担う人物として。

いくつもの顔を持っていたからこそ、持統天皇という人物は1300年以上たった現在でも、こうして物語として描くことができるのではないでしょうか。

もちろん、私が「現代なら首相のような政治家だったのでは?」と考えたのは、あくまで現代人である私の勝手なイメージです。

飛鳥時代と令和では、社会も政治制度もまったく違います。

それでも、持統天皇が生きた時代に「国をどう作っていくのか」という大きな変化が起こっていたことを知ると、今までよりもずっと興味が湧いてきます。

歴史上の人物を知る方法は、難しい歴史書だけではありません。

漫画を読んで、気になった人物をWikipediaなどで調べて、そこからさらに疑問が生まれる。

そんな入り口があってもいいのではないでしょうか。

私にとって『天上の虹』は、まさにそんな作品でした。

そして今回、漫画と歴史を比べてみたことで持統天皇という女性を、もう一度別の角度から見てみたくなりました。

※この記事は『天上の虹』を読んだ一読者による個人的な感想・考察です。歴史上の人物についての評価や解釈には諸説があります。歴史的事実と漫画作品における創作・人物描写は分けて考えています。

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